(17)男女の性反応とオーガズム









男女の医学・生理学的な性反応は下記に詳しく書いておくが、男の性反応は何らかの刺激によってペニスが勃起する。そして単純にいうと、何らかの方法で射精をしたくなる。マスターベーションやセックスをすることで射精中枢が刺激され射精して、勃起までした激しい性欲はおさまる。治まると同時に多くの場合睡魔に襲われ、触られるのも嫌になる。
女性の性反応は複雑で快感の経験度に比例した性欲が生まれる。つまり知っているオーガズムの質および量によって、望む行為が変わってくるのである。処女の性欲、性反応ではモヤモヤした漠然とした欲望であり、クリトリスを愛撫することで充分満足できる。また性経験が浅い、あるいはクリトリスオーガズムしか知らない場合も似たようなものである。膣オーガズムを知っている女性はクリトリスオーガズムで火がつき、膣オーガズムを味わいたい欲望が生まれるものである。逆に言うなら、膣オーガズムを知らなければ、女性の性欲処理もクリトリスを刺激すれば済むので、意外に簡単だといえる。男いらずの性処理が可能なのがクリトリスオーガズムだ。
ただ男の場合30代後半位までは外部からの刺激に関係なく、性ホルモンの命令で勃起と射精をしたくなる性的欲求もある。この現象が精液が溜まったから勃起したという表現になるが精液の出来上がるメカニズムから考えても精液が溜まっている貯蔵タンクは器官としてない。精嚢、前立腺、精管からそれぞれ液体が分泌放出、尿道で一緒になって精液となるのだから、精液の貯蔵タンクは存在しないのだ。
女性の性反応で話題になる膣が濡れているという問題だが、膣は平常時でもある程度濡れているものであり、濡れるイコール性反応とは言えない。詳しくは下記参照

 人間が性的刺激を加えられて興奮すると、身体の各部に変化が起きる、これが性反応というものである。変化するのは性器に限定されたものではない。このことは米国のマスターズ博士とジョンソン博士夫妻が発表した1966年「人間の性反応」がすべてを語っている。50年経った現在においても、この著書以上の科学的性反応に関するデータは存在しない。しかし、今後は脳科学などの分野の研究がMRIなどのハイテクの貢献で飛躍的観察成果をもたらすことが期待されるので、オーガズムの科学的メカニズムや性感神経の研究などベールに包まれている分野の解明がなされることが期待できる。現時点では上述の「人間の性反応」を参考に、この項を説明していくこととする。

*ご注意!ここに記す「性反応」はすべての男女に共通するものではない。「性反応」の個人差は激しく、ここに書きしるす現象が、正常であると勘違いしないよう注意していただきたい。

(1)性反応総論

人間はある時点で、心理的、精神的、肉体的、物理的刺激を受けると、
血管が拡張充血し、性器周辺の筋肉が緊張する。その結果、陰茎やクリトリスは勃起する。女性は膣壁から粘液を分泌する。これらの現象は自律神経(自分の意図しない神経)が興奮して、全身の血管が充血することによって引き起こされる。

(2)男の性反応

男の性反応は勃起しかないだろうと多くの人は考えている。まあ、間違いではないが、性器以外では男女共通の性反応がみられる。まず、
セックスフラッシュ現象である。これは白人の場合観察し易いのだが、黄色人種でも見えないが起きている現象で、肌が紅潮するということだが、色白の女性やロシア人などは丘疹模様をみせることがある。乳頭の勃起も男性にもみられる。筋肉の痙攣は正常位ではみられないが、女性上位の体位では手足の痙攣収縮という不随意収縮が観察できる
実は目に見えないが内臓・消化器系の管は非常に緊張状態になるし、肛門括約筋やその周辺の筋肉も収縮を示している。心拍数も増加、血圧も上昇する。外分泌線からの発汗も多くみられる。時にはオーガズムに向けよだれを流す男性も存在する。
当然のことだが、
性反応が最も顕著な陰茎ではご存知の勃起が始まる。性的刺激を受けて(視覚聴覚などからの刺激が大脳皮質を刺激、視床下部の性中枢を興奮させ、その刺激が脊髄にある勃起中枢を興奮させて起きる)、5秒から30秒程度で陰茎海綿体及び尿道海綿体に血液が流入、本来戻る流れ(静脈)を堰き止めることで、血液が陰茎に充満して硬直が起きる。膨張率は概ね3.3〜3.4倍程度と考えられている。亀頭部には海綿体組織が少ないので、陰茎ほどに硬直することはない。
男性の唯一のオーガズムと思われている射精においても、多くの関連筋肉群が収縮を行っている。この「射精反応」という性的反応は尿道括約筋、球海綿体筋、坐骨海綿体筋、会陰横筋などの反復収縮によって引き起こされる。射精収縮は不随意的に尿道海綿体すべてに影響をあたえ、精液を尿道前立腺部から尿道へ噴出させる。この時の射精収縮は0.8秒間隔で発生して、精液の射出を3,4回繰り返す。
射精後は陰茎の静脈弁が開放され、完全勃起状態から半勃起状態を経て、徐々に平常時の陰茎に戻る。この現象は個人差や年齢差によって左右され、射精後も膣内に陰茎を残しておくことで、半勃起状態が短く、次の完全勃起を起こす場合もあるが、多くは20代前半までに見られる現象である。
意外と知られていないが、
射精収縮が始まる少し前から、睾丸にも変化が見られる。(外部から見るには陰嚢の動き)射精収縮に筋肉が動き出すと同時に、陰嚢は会陰部(陰茎のつけ根)に向かって上昇を始める。この上昇は興奮度に比例して、射精直前には会陰と密着する位置まで上昇する。この現象は起きないと、射精が充分に起きないことが多い。おそらく、睾丸が上昇することで、精管との距離を短縮、副睾丸の圧を高める作用を持っていると考えられる。

(3)女の性反応

女性が性的に興奮すると
「濡れる」、それだけを考えている男性、そして女性が意外に多いのだが、実は女性の場合男性以上に身体各部に様々な性的興奮の兆候が見られるのだ。
その多くは充血と筋肉組織の緊張からもたらされる。セックスフラッシュは男性よりも多くの女性にみられるが、肌の色が濃い女性では顕著に見ることは男性同様ない。
筋肉の痙攣は女性が下位にいる場合が多いので、数多くみられる。内臓消化器系器官の収縮も男性同様に起き、外分泌も活発になり、唾液の量も増す
以上の男性と共通の性反応に加え、女性の場合乳房と性器に顕著な身体変化が見られる。まずは
乳頭の勃起である。乳房の静脈の充血により、乳房自身、乳輪が膨らみ、乳首は勃起する。
次に性器においては陰唇に変化が現れる。子供を産んでいない女性では分かりにくいが、
お産の経験のある女性の大陰唇は、性的刺激により大きく膨らむ。平坦だった大陰唇はフックラと2,3倍の膨らみを見せる。小陰唇は厚みが増す感じに膨らみ、うっ血によって赤黒く変色する。クリトリスも若干だが勃起を示す。(陰核包皮に包まれたクリトリスでは現象は確認しにくい)膣口の一対のバルトリン腺から粘液が分泌される。膣口も僅かに開口する。
最も激しい変化は、膣内の粘膜壁から大量の粘液(愛液)が汗のように滲み出る膣内の奥3分の2は拡張し(テント形成)、精液プールを作る。膣の入り口付近3分の1は膣壁が充血によって隆起し、あたかも巾着のように締まった感じになる。オーガズム隆起(注意すべきは、男性が乱暴な動きをしていたり、興奮していると、この女性の僅かな膣の変化を感じることが出来ないことが多い)最後になるが、子宮は性的興奮時には下がると考えられていたが、真実は逆で、子宮は上昇する。その中で、激しく収縮を繰り返し、時には子宮頚部および子宮口においても、その動きを感じることが出来る。これも冷静で優しいセックスによって感じられるものである。

(4)オーガズム

オーガズムとは
「男女が性行為を行い、その快感が徐々に増加して、ついにその極点に到達した状況である。男性の快感は局部的で、その上昇下降の曲線は急峻。逆に女性の快感は部分と身体全体に及び、快感曲線はなだらかである」と「医学大辞典」は解説している。つまり、オーガズムは男女の性反応のサイクルの一つの現象であるが、これがあるかないかで、男女は性行為の意義を捉える傾向もある。生理学的にこの快感を解説すると、全身の生理的機能が限界点まで我慢され、一気に開放される時に起きる快感現象だということが出来る。性的に興奮して、極度に緊張した筋肉、神経が一瞬にして開放されるギャップによって生じる、生理的現象といえる。一般に男性のオーガズムは射精に限られ、緊張した尿道を一気に精液が通過することで起きる快感と思いがちだが、必ずしも男性のオーガズムや快感は射精に限定されたものではない。勃起という緊張を引き起こすことでも快感はあるし、勃起した陰茎が物理的に刺激されることでも快感はある。また、射精を寸前で中止する(寸止め)においても、射精に近似したオーガズムを得る事ができる。早熟な子供時代を過ごした男性は経験があるだろうが、精通がない子供の時代にも、マスターベーションでオーガズムに達し、それ以上勃起に触れるのが苦痛だったことを思い出せば、オーガズムが射精ではないことがよく理解できる。
男性のオーガズムも陰茎という限られた範囲の快感極地のように錯覚しているが、実は身体全体で感じる快感の一つだということである。しかし、キンゼーが言っているように
オーガズムは自らの自覚が評価の対象であるため、第三者が客観的に理解できるものではない。ただし、性行為を行っている双方のパートナーには、相手がオーガズムに達しているかを体感することは可能である。相手の極度の筋肉の緊張と攣縮および開放が体感できる。
このオーガズムは個人差が激しく、又パートナーとの性的相性によっても大きく左右される性反応でもある。特に女性においてこの傾向は顕著で、パートナーへの好意度や満足度に大きく左右される傾向が強い。ある意味、非常に心理的要素・神経的要素が関係しており、今後の脳科学の研究が待たれる。

(5)女性のオーガズム

男性の多くは、
性的興奮と勃起と射精を通して、95%の男性が、なんらかのオーガズムを感じることが出来る。しかし、女性が性行為でオーガズムに達する確率は50%以下といわれている。まして、性反応のサイクルの一つ「性的快感」(例えばクリトリスによる快感)もオーガズムだと解説していることが多いために、この50%についても勘違いの数字が含まれていると考えるべきだろう。
前述の通り、オーガズムの基本は全身のあらゆる筋肉の緊張と開放が原則である。
この筋肉の緊張には、精神的没頭と集中が性行為中に求められることでもある。結果的に、足が攣るとか翌日に肩が凝るとか首筋が痛いなどの症状が現れるほど、激しい筋肉の緊張・硬直が必要とされていることを、ここで強調しておこう。若年、肥満や虚弱な体質の女性がオーガズムを得にくい理由がここにあるのだ。
女性のオーガズムは前述のように緩やかな曲線の性反応の中で発生するので、短兵急な男性の性反応曲線と基本的にミスマッチしている。ここが最も女性が真のオーガズムを得にくい元凶なのである。
女性の真のオーガズムがどのようなものなのか、実は非常に説明が難しい。ハイトリポートなどで報告されているオーガズムを表現する様々な言葉も個人差が多すぎて、最大公約的表現をみる事が出来ない。
現在、標準的女性のオーガズムについて判っていることは、次の点である。

1、 性反応の過渡期における
クリトリスを中心とした「快感」をオーガズムと勘違いしている人々が多い

2、 ジェンダーフリーの世の中にあっても、オーガズムを得るには、パートナーである男性の、
女性のオーガズム曲線に合わせられる性行為中の努力、テクニックが不可欠である

3、 いったん真のオーガズムを体得した女性は、逆になだらかなオーガズム曲線を熟練によって、
急激な男性のオーガズム曲線に合わせることが可能になる

4、 女性のオーガズムはその時の精神的没頭、集中を経て、全身の筋肉組織の緊張、攣縮、およびその開放で得られるので、
性行為のパートナーとの間に信頼関係は不可欠である。オーガズムという性的快感の頂上を感じたいという強い意志がないと、ほとんど得ることはできない。ある意味で、オーガズム以外の目的・思考を停止することであり、「禅」の境地が必要である。

5、 4を実現する性的パートナーの環境は夫婦や恋人であり、不倫における男女の関係である

6、 何もせずに男性からのサービスでオーガズムを得ることは不可能である。自ら自分の身体全体を結合部に集中し、筋肉組織の緊張を厭わず、
苦痛に近い緊張の中で、オーガズムの到来を待つ、忍耐力や持久力そして貪欲さが求められる

7、 このようにして緊張と攣縮を持続し、それを一気に開放したときに、女性は真のオーガズムを感じることが可能になる

8、 オーガズムに到達した女性の多くは、発汗、腹部筋肉の硬化、呼吸脈拍の増加、血圧の上昇が観察できる。そして、呼吸を停止することでピークに達している緊張を解きほぐしたとき、オーガズムは現れる。
いったんオーガズムが現出すると、視覚・聴覚・味覚・痛覚などが麻痺して、外界からの刺激を一切受け入れない状態になる。

9、 このオーガズムを得た状態を見ると、「失神」という表現が当て嵌まる

10、 多くは数分で回復する。しかし、性的パートナーが何らかの性的刺激を回復後に与えると、
再びオーガズムを得た少し前の女性の身体が再現され、マルチオーガズムのサイクルに突入する

11、 このマルチ・オーガズムは性的行為としては、異常に高まった快感の連続であり、「よくぞ女に生まれけり」なのだが、身体・内臓などあらゆる器官を駆使して行われる行為であり、限界を定めておかないと、身体的なダメージは相当なものであることを肝に命じる必要がある。

12、 このマルチ・オーガズムの終着点を男性パートナーの射精に位置付けるのが、もっとも簡単で納得し易い。

13、 マスターベーションを前向きに行い、クリトリスで若い時期から「快感」を得ることが、多くのセックス指南書に書かれている。しかし、筆者はこの
クリトリスオーガズムで容易に快感を得てしまった女性は、結合におけるオーガズムを会得しにくい体質乃至は心理的制御が働いてしまうことを懸念している。クリトリスにおける快感の享受には体力も差したる努力も必要ではなく、お手軽快感に満足する傾向が顕著である。

14、 勿論、コミニケーションとしてのセックスが全てであると考えるならば、クリトリスオーガズム説でも充分である。結合によって得られるヴァギナやボルチオや骨盤・隔膜におけるオーガズムまで不要ですというのも、一つの選択である。しかし、その性反応のサイクルの一部に過ぎない「快感」をもってオーガズムと解説することには疑問を感じる。

15、 何故、熟練し真実を知っている婦人科医がそのことを述べないか、薄々理解は出来る。ここで解説した
女性のオーガズムに至るには男女の性パートナーが多くの時間と回数と試練や努力を経て到達できる領域だからだ。夫婦であっても、オーガズム到達前に子供が生まれ、性行為の環境が変化することが多いし、日本の男女がそこまでSEXで快感を得ようとしていない社会的要因もあるし、実際に教科書通り努力しても失敗の連続になる可能性も高く、汎用的オーガズム解説としては不適当だと考えているのかもしれない。

16、 ここでは「真のオーガズム」について、隠すことなく解説したのだが、おそらく
このレベルのオーガズムに至る性的ペアは2〜30%に過ぎないであろうことも現実であり、夢と希望を打ち砕く不快なものになるかのしれない。たしかに生活を行う上で、ここまでセックスと真のオーガズムに執着しても意味ないだろうとという考えにも一理ある。ただし、このhowtosexはそういうことを解説するものであり、ライフスタイルを云々するものではない。
饗庭龍彦


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