(22)産後のセックス









産後のセックスを何時からしたらいいのかという問題だが、医学的基準としては「悪露」がなくなる確認が必要なので、4〜6週間の猶予がありそうだ。つまり、おおむね一ヵ月後くらいから、出産後のセックスは行えるということになる。
出産一週間後に堪らずセックスをしてしまった夫婦を知っているが、だかといって会陰が破けたとか感染症に悩まされたという話は聞いていないので、重大な基準とまではいえない。しかし、現実は産後2,3ヶ月という場合が圧倒的に多いようだ。
特に初産の場合は授乳やオシメの取替え夜泣きなどで女性の方が性欲があるとは限らないので、無理強いは禁物。しかし、子供が生まれたことで性的関係を半年1年と休止することはセックスレス夫婦への一直線だとも言われているだけに、注意が必要だ。
また授乳期の女性の膣は分泌物が少なくなるので、充分な前戯を行うか、時間的に余裕がない場合は潤滑ゼリーを活用させる必要があるだろう。
一般的に授乳によって半年から1年くらいは、プロラクチンというホルモンが脳の下垂体から分泌され、このため排卵が抑制月経が起こらなくなる。つまり生理が来ない事になるので妊娠はし難い。しかし、現実は理論どおりとは限らないのものである。母乳が出ない場合なども含め、1ヵ月後に排卵が始まることもあるので、次の子が欲しくない場合は避妊の必要がある。
以上が医学的情報。
それでは次に、妊娠中完全に乃至は一時的にセックスを控えていた場合の再開上の問題を考えてみよう。
前述のように、1ヶ月後にセックスを再開する夫婦は15%程度で、60%は出産後2ヵ月くらいまでに再開しているようだ。セックスレスが叫ばれている今日日としては感心な数字である。
しかし問題はその後がどうなるかだ。医者は出産後3ヶ月もしたら、膣は元通りになると主張するが、どうもこれは嘘のようである。一度伸びた膣はある程度戻るだろうが、完全に復元するわけはない。仮に復元したとしても、伸びる糊シロが出来てしまっているので、挿入した時の窮屈さは消え去っているものだ。ここのところは産婦人科医のマヤカシ、リップサービスが含まれると考えるべきだろう。
産後のセックスは膣の変化や会陰切開の傷が気になったり肉体的問題もあるが、馴れない育児に伴う精神的・肉体的疲労も加わる。その上、心理的に自分の身体が出産前同様に魅力的なものであるかどうかへの疑問・不安も存在する。つまり、出産後のセックスに望む女性の精神は不安定なものである。この辺を充分理解して、妻に接する事が重要であり、「何だか拡がったね」とか「ニオイがきつくなった」「お腹の皺が」など妻を傷つける言葉は、それが事実であっても口にしない礼儀を身につけるべきだ。
授乳中の女性の体は愛液が不足気味なので、充分なクンニリングスで分泌を促すと同時に、唾液を駆使しよう。ゼリーを使わないと無理そうな場合は、指や口での性器外部とクリトリスへの愛撫で妻を気持ち好くさせよう。最後に自分又はフェラチオで処理するのも選択である。そうして徐々に体を性的なものに再び戻す地道な努力も必要になる。
挿入が出来たとしても、性急な動きは控え、女性の反応を観察しながら、どこまで動いて良いのかをたしかめる注意力も必要だ。勿論前述の通り、避妊を無視してはいけない。
以上のように、出産後の女性の8割は自分の身体の何処かが出産前と違っていると意識しているし、4割は性欲も落ちていることを頭に入れて、出産前以上に愛情をこめた入念な愛撫を工夫しよう。彼女たちには、女としての魅力へのコンプレックスが生まれつつある状態なのだから、それを打ち消す言葉を掛けるのは夫の努めである。
その辺を手抜きする事で、妻のセックス嫌いを引き出すことになり、経産婦独特のオーガズムを知らずに一生を終わる夫婦が誕生する。勿論、ホンモノの膣の蠢きなど味わえなくなるということだ。膣の締まりを入口だけだと思っている多くの亭主は、経産婦の膣の中間・奥の妙技を知らずに過す事になる。
つまりは自分が見捨てた妻の体を、不倫の相手に味わわれるハメになるという惨めな出来事も起きるということだ
饗庭龍彦



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